2008年04月28日

ゆきちゃん、さよなら(その2)

土曜日は「ゆきちゃん」を追悼する会があった。

私は仕事があったのでずいぶん遅れていった。一応、会は午後6時から8時という案内で、私はどうしても8時近くになってしまうから間に合うだろうか、と思い、それでも「美華」の常連の集まりがそんな早く終わるはずはない、とも信じ、ともあれ仕事の後急いで駆けつける。

案の定、終わる気配などさらさらなく、会場は人で満杯。
追悼会の会場は、美華の下の階で営業しているカレー屋さんである。
美華はゆきちゃん自身が所有しているビルの2階で営業していた。3階は家族の住居で、昔は1階で美華を営業していたそうだが、今では1階は石垣島大好きなご夫婦による美味しいカレー屋さんになっている。ゆきちゃん自身がちゃんと面接して選んだ店子さんだから、ゆきちゃんとも仲良しで、カレー屋の営業が終わるとよくそこのマスターも美華に飲みに来ていた。
カレー屋でありながら泡盛も提供している、やっぱり変なお店である。

bika.gif
↑ありし日の美華とゆきちゃんを描いた私のイラスト(いつ描いたか不明)

040429美華逆光.JPG
その後写真を見つけたので追加。ある日の逆光の美華

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↑ゆきちゃんの愛犬「みっちゃん」(サンバチームHPのコラムに掲載したイラスト)

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また写真を見つけたので追加。本物のみっちゃんとゆきちゃん

もとの美華だった2階には、臨時の祭壇が設けられ、お焼香ができるようにしてあった。
美華はお店と言うより、ゆきちゃんの主宰するサロンみたいなものだった。だからそこの主が消えれば美華も消滅。名物だった大きなテーブルもすでに撤去されて、ほかに処分するものがゴミ袋に入れられて置いてある。がらんとしてしまった床に直接しつらえられた祭壇。
お通夜お葬式のときもそうだったが、遺影のゆきちゃんはなぜか笑っちゃうぐらい若かりし頃の姿。25歳ぐらいの、結婚式の時の写真だという。だからそれを見ると、悲しいと言うより「ええ?だれこれ?何この写真?」とつい笑ってしまう。

けれどあのテーブルもない、常連さんの中に数多くいたミュージシャンや俳優さんたちの関係のチラシとかが壁にたくさん貼ってあったのもない、勝手に自分でついで飲んで!というシステム(?)だった大きな紹興酒のカメも、ビールとチューハイのサーバーも、日本酒やワインが入っていた冷蔵庫もない。常連さんがしょっちゅうなにかしらもってくるものを入れていた業務用の冷凍庫もない。
こみあげる寂しさ。

下の追悼会会場には、ちゃんとゆきちゃんの「近影」の写真がある。みんなでゲラゲラ笑いながら、楽しく飲んでいても、ゆきちゃんの近影を見るに付け、やっぱり寂しい。

これであの祭壇に近影が置かれていた日にゃ。みんな泣いてしまうだろうよ。だれの配慮か知らないが、しめっぽくなりすぎないようにという写真のチョイスなのかなと思う。

美華の常連さんには、けっこう「有名人」が多い。彼らにとってのプライベートであるから、ここで名前は出さないが、そういう人たちも何人か来ていた。会の始まりのときに、某女性歌手Oさんと某ミュージシャンUさん、それにわが連れ合いが3人で「アメージング・グレース」を演奏し歌ったらしい(私は間に合わなかったが)。

私も美華でライブをやったことがあるし、そうでなくても美華にくるたびに「何か歌ってよ」とゆきちゃんやその他常連の方々にけしかけられて、なんとなく毎回何かしら歌っていたので、ここでは私は歌手の端くれとして認識されているらしい。それであなたも是非歌ってくれということになり、「みあげてごらん夜の星を」を歌ったのだが、なんと簡単なはずの歌詞がどこかですっとび、隣にいたその歌手Oさんに助けてもらうみっともない有様。
それでも、歌い終わると、私の前に座っていた某女流詩人Sさん(今の若い人たちは知らないかもしれないが、詩に関心のある人ならたいがいは知っている「超」有名クラス)がものすごく感動してくれて私の手を取ってほめてくれる(彼女はもう80歳近いのではないかと思われるが、私のライブにもかつて来てくれてとても喜んでくれたのである)。

それがきっかけでまたもライブコーナー(?)風となり、某ものまね芸人Fさんと某ミュージシャンHさんとうちの連れ合いがなにやら即興でパフォーマンス。一同大爆笑である。

そしてまたみんなこもごも談笑しながら飲みに飲む。有名人も無名人もない。特に名前を知らない人同士でも普通に話が弾む。

だがふと気づくと、ゆきちゃんととくに仲が良かった某ミュージシャンUさんが、ゆきちゃんの近影写真を手に、目頭を押さえ、そしてこらえきれずに嗚咽している。
それを見たとたん私の目にも涙があふれる。

ゆきちゃんが亡くなってもう2週間以上たち、家族でもなかった私は別に日々嘆いているわけではない。普通に、笑って楽しく暮らしている。
でもふと、ああ、もう美華はないんだ、という思いが、なんでもない瞬間にやってきて、ちょっと伏し目がちになる。
1年ぐらいご無沙汰していて、別に美華に行かなくても困ることはなにもなかった。
でもいざ「もうない」となると…。
今まで、あると思っていたから安心しきって、別に行かなくてもいいやと思っていたのだ。なくなって今更ながらに、ああ、もうない、行きたくても行けない、と思うとたまらない。
(わが連れ合いは私よりもさらに美華やゆきちゃんに世話になっているので、私よりもずっと痛手が大きいようで、ほぼ毎日のように「なんか思い返すとほんとにいろいろ世話になったんだよな…」とか「人の縁ってあるよね…」とか、同じことを繰り返し繰り返し述懐している)

変な店だったよね、こんな店はもう二度とないよね、と私の隣にいた、だれだか知らないが(^_^;)常連さんのひとりがしみじみ言う。そうですよね…と私も言う。

終了予定の8時なぞまったく大幅に過ぎてしまった12時近く、そろそろ「中締め」(まだ「中」締め…)にしようということになり、一同、2階にあがって写真を撮ろうということになった。
懐かしい美華の、暖かい日はいつも気持ちよく明けはなっていたアコーティオン式窓を背にしてみんな陣取る。常連さん代表でWさんがスピーチする。美華はなくなるけれど、美華でできた人の輪は存続させていきたい、ちゃんと連絡先などをリストにして保管しておくから、また集まりましょう、という。それでこそゆきちゃんも喜ぶだろう、と。
私は泣けて仕方がない。ほかにも泣いている人が何人もいる。お通夜でもお葬式でも泣いていなかったが、やっぱりこの「美華」の場所での、美華との別れ、「美華のゆきちゃん」とのお別れがほんとのお別れなんだとみんな感じるのだろう。

それでもみんな笑って写真に収まる。
Wさんはあしたの朝は8時集合だ、と言っている。いつもみんなで行っていたタケノコ掘りにやっぱり行くのだそうだ。
私は別のイベントがあるので行けなくて残念だが、ほんとうにそういうつながりをこれからもずっと保っていてくれたら嬉しいと思う。
posted by おーゆみこ at 14:30| Comment(0) | TrackBack(0) | ■日々つれづれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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